私の住む谷根千エリアには、文豪と呼ばれる方々のゆかりの場所が多いです。
- 夏目漱石の住居跡…「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「草枕」などを執筆。
- 同じ場所に、のちに森鴎外が住む。
- 先日閉館した「水月ホテル鷗外荘」も、かつての森鴎外の住居で、ここで「舞姫」を執筆。
- さらに「森鴎外記念館」もかつての森鴎外の住居。「高瀬舟」「山椒大夫」「阿部一族」などを執筆。
- 「青鞜社(せいとうしゃ)」発祥の地…平塚らいてうが「元始、女性は太陽であった。」を発行。
- ほか、「高村光太郎の住居跡」「講談社発祥の地」など…
東京大学が徒歩圏内なので、出身者にゆかりのある場所が多く、文学好きにはワクワクするスポットが多々あります。
私は文学好きとは決して言えないけれど、それでも特にこのエリアに縁のある森鴎外のことを今だによくわかっておらず…。
「森鴎外記念館」にも、実は足を運んだことがありません。
来年は記念館に行きたいな。
となると、少しでも作品を知っておきたいな。
レンアイものである「舞姫」と迷い「高瀬舟」「山椒大夫」。…20代くらいなら間違いなくレンアイものを選ぶんですけど。
より渋い方をチョイスしたくなってしまうアラフィフです。
そして以下、文豪の本の感想文としてはあまりにも稚拙かと思いますが、「思ったことを整理する」というレベルで、ちょっとまとめてみます(謙遜でもなく、ほんとに稚拙です)。
森鴎外の本を初めて読んだところ、世知辛く殺生な描写が多く、二作とも必ず誰かがむごい形で死ぬという物語でした。
そんな中で描かれているテーマは、「高瀬舟」は「安楽死」、「山椒大夫」は「自己犠牲」かなと思いました。
「安楽死」については、今の日本でも認めるべきだという意見も見聞きしますし、ひとつの到達点だということを今も昔も変わらず考え続けられているんだなと「高瀬舟」を通じて思いました。
「山椒大夫」で描かれる「自己犠牲」については、私は以前三浦綾子さんの「塩狩峠」を読んだ時に、キリスト教においての真理とされているものなんだな、というのを知りました。
「安楽死」においても「自己犠牲」においても、「果たしてそれが正義なのか否か」というモヤモヤさを残していて、描写には不気味さもあり、それが二作のおもしろいところかなと思いました。
「安楽死」も「自己犠牲」も、今では“愛”“真理”だとみなされたり、そういった意見があることを世の中は受け入ているけれど、当時はそこまでではなかったんじゃないかと思います。そんな中でそんなテーマを投げかけて読者を不穏な気持ちにさせたこと、プラス物語としてのおもしろさが、名作とされているんだろうなーと思いました(あくまでも私の感想です。ちがっていたらごめんなさい)。
ちなみにひとつ気になったのは、「高瀬舟」にも「山椒大夫」にも“明らかな悪役”が出てくるんですけど、森鴎外の描く物語は、彼らが後ほどひどい目にあいませんでした。その後もそれなりに、なんなら上手く世を渡っていきます。
なので、勧善懲悪を期待してはいけないです。私は“明らかな悪役”にはコテンパンにやられて欲しいので、なんでやねんとモヤモヤしました。
その“なんでやねん”っていう部分については、考えてもわからないので文庫本の解説文を読みました。
「善が栄えて悪が滅びるというのは理想的な空想かも知れないが、悪が栄えて善が滅びるというのも逆理想論の空想的観念にしかすぎない。世の中にはどんな理不尽なことも起こり得るのだし、また、それほど棄てたものではないというのが世間的な通り相場なのである」
ということでした。
…わかったようなわからないような。
要は、「どっちもあり得るし、あり得ないことでもあるから、自分の作風にあった方の結末を選択するヨ」っていう森鴎外の作家としての意思なのかもしれないです。
モヤモヤ読後感を表現したかったのかも。
知らんけど。
…この辺りの謎、森鴎外記念館で学べれば楽しいんですが。そうしたら私なりに「森鴎外についてちょっと学んだよ」という気持ちになれるかも知れません。
ちなみにそんな、森鴎外のモヤモヤ&むごいストーリーを読みつつも、いちばんに思ったのは文章のきれいさと場面描写のうまさです。
人の表情や心の動き、明かりが灯った時、森の中に入って行った時、船が動き出す時。さまざまな描写には無駄がないのに、伝わるものがくっきりとあって、そこが心地よかったです。
谷根千に縁のある方の作品を私なりにですが読めたので、ちょっと満足です。
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marble marble マーブルマーブル
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