てんとてん

喫茶好きのイラストレーターの日常ブログ。てんからてんへ、ぼんやりとした日々。

夏の読書感想文(延長戦)『ツナグ』

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“夏の読書感想文”って!笑

すっかり秋が始まってはいるのですが、読書感想文の延長戦、あと1冊記録を残しておこうと思います。

 

本を読むのは、個人的には登山に似ています。

本を選んだ時はワクワク → 読み始めに長期戦を予感してしんどい → やがて物語が一気に立体的に見えてきてとても楽しくなる → 最後には、読み終わらなくては分からなかった気持ちが味わえ、またチャレンジしたくなる

ささやかながらドラマがあり、登山時のブログを書くのも好きだけど、感想文を書くのもまた楽しいのです。

 

 

辻村深月さんの『ツナグ』を読みました。

ツナグ(新潮文庫)

ツナグ(新潮文庫)

 

【物語】一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。ツナグの仲介のもと再会した生者と死者、それぞれの思いを抱えた一夜の時間は彼らに何をもたらすのであろうか。

 

ありえないファンタジーの世界。

今このタイミングで、私はどうしても読んでみたいと思いました。様々な方がこの世を去っていってしまう昨今のどうしようもない喪失感の中で、少しでも自分の気持ちを慰めたかったのです。

小説の中だけでは、そんなことがあってもいいのかなと、救われたいような気持ちでした。

 

読み始めての最初の感想は、“ラノベのような世界だな…“でした。

はなからそんな予感はしていたけど、ツナグがなんと若い高校生の男の子(ギャルソンのコートを着てて、細身でクール)なのもそんな感じだし、満月の夜だけ死者に会えるという設定もそうだし、作者さんが各人物像を器用に書き分け、器用にストーリー展開させていくせいか、生々しさがないような。

ラノベを否定していません!純文学、ライトノベル。それぞれの良さがある…

きれい過ぎるくらいに「良い話」だなと思い、「まあ、こういうの好きな人は好きだよなー」とか思っちゃって、救われたかったはずなのにそこまで感情移入をできず、読み進めるのにすごく日数がかかりました。

 

だけどやっぱり!

最初に言った登山と同じで、最後まで読んでみないと感動って分からないんです。

「ツナグ」は、想像以上に立体的なストーリーでした。

 

多分一度は、読み返したくなります。私は全部じゃないけど、いくつかの話は読み返しました。

特に「ツナグとは何者か」というのが分かってからは、序盤に感じていたラノベっぽさは薄れ、ツナグが高校生の男の子であった理由も理解でき、一気に立体的に見えてきます。

 

最初この物語は死者に会う「生者」が主役です。なのですが、“ツナグとは何者か”というのが分かってからは、「ツナグである男の子」を主人公に想定し直し、成長の過程を追うようにして読み返すとおもしろいんです。

 

 

ツナグの男の子を端的に表すと「優しい子」です。

「大人」だな、とも思った。

自分の人生に降りかかっている「運命」を、粛々と受け入れられる人って大人だよな…って思う。

若くして自分の運命を粛々と受け止めたツナグの男の子。これからたどる人生に苦しいこともあるのだろうけど、豊かであるといいなーと、そんなふうに思う作品でした。

 

物語の中では、親友だった女子高生2人の話が特に良かった。この2人は唯一、日常生活でもツナグとの接点があり、その関わりもわかるとおもしろい。

しかしこの物語の主な登場人物3人の運命は、なかなか辛い。特に生者の女の子。今後の人生でずっとこれを背負っていくのか…と思うと、読んでいて胸が痛かったです。

 

アニメ化、実写化がぴったりだな…と勝手にキャラクター像を浮かべていたけど、すでに松坂桃李さん主演で実写化しているんですね。なるほど。あー重要な役の祖母は樹木希林さん。うんうん、そうなるよなあ…って思っちゃった。

いろいろ腑に落ちすぎた。笑

 

 

また救われたいなと思った時に、観てみようかなあ。

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marble marble マーブルマーブル

イラストレーターです。日々気になったことをテーマに問わずブログにしています。マーブルチョコのようなカラフルで雑多なブログを想定し、「marble marble マーブルマーブル」としました。純喫茶、マッチ、散歩、昭和の建物、昭和歌謡、片付け、スケジュール帳などが好きです。コメント欄がありません。ご感想などはこちらまで→marble●tellacoli.com(●→@)
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