伊坂幸太郎さんの本を、初挑戦しました。
『終末のフール』。
8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そんな予告があってから5年が過ぎた頃の世界を描いています。絶望によりパニック状態になった世界では不幸も多く訪れ、多くの命も失われています。
5年後の今はというと、平穏な小康状態という状況。
地球の誰もが余年3年という状況下で、登場人物たちはどう動くのか。家族が再生される人。新しい命に希望と絶望を抱える人。恨む相手に復讐を誓う人も。
仙台の団地を舞台にしたオムニバスストーリーです。
伊坂幸太郎さんの本、文章がかっこよかったです。
伊坂さんの作品って、ほとんどがかっこよく映像化されているじゃないですか。私は「アヒルと鴨のコインロッカー」を映画で観ましたが(すでにタイトルがかっこいい)、イケてる設定、イカした人間関係、小気味良い会話、などなど。…とこのように私が表現したらめっちゃダサくなってしまうんですが、かっこよいなーと思いながら作品に触れていました。
けっこうステレオタイプの登場人物も多く、キャラクター分けがはっきりとしている感覚もありました。
そして描かれている世界はあくまでも、どこにでもありそうな日常風景です。
ちなみに私は第1章「終末のフール」に出てくるお父さんは大嫌いです。息子を自死に追いやってしまった原因がはっきりと自分にあるにも関わらず、それを受け入れようとしないプライドの高さに、普通に怒りを覚えました。
第1章だけネタバレを少ししてしまうと、彼の人生は成功していたはずなんだけど、息子は自死し、娘も家出をし。受け入れがたい状況になっていることに気づいてはいるけど偉そうな態度でそれを突っぱねているといった人物です。
そんな夫に第一に寄り添っていた妻がいるのですが、久々に再会した娘を通し、実は妻は誰よりも彼を憎んでいることが物語の終盤でわかります。
物語としてよくある設定なのかも知れませんが、この小説の場合「全員が3年後に死ぬ」という壮大な絶望が待っているため、意味合いが変わってきます。
この親父は(オヤジ呼ばわり…)、たぶん最後まであんまり性格は変わらんだろうなーと思います。
ただ、嫁と娘は、地球滅亡を目前に、父に言いたいことが言えて前を向けた。
喜びと絶望の混ざった感じを、読みながら受け止めました。
そもそも死が確実に訪れることがわかっている上で人生を見つめなおすというのは、とても残酷な設定です。
また、「現実にこんなことが起きたらどうしよう」と思うには、あまりリアリティがありません。だからあくまでも、伊坂幸太郎ワールドをのぞくという感覚で最後まで読みました。
ただ設定自体は現実離れしているのだけど、今って世の中コロナ禍ですよね。コロナという非日常を突きつけられることで、今の世の中ってその人その人の本性というか、人間像が浮き彫りになっているような感覚が起きている気がします。
なのでちょっと、『終末のフール』のパニックと小康状態は、現実に起きていることとリンクしているのですよね。
個人的に『終末のフール』を読んで思ったのは、「人間っていいな」という感覚より「あー人間ってやだやだ」という感覚でした。コロナ禍で読んだせいだと思います。現実を突きつけられ過ぎてしまう感覚がありました。タイミングってありますねー。
伊坂幸太郎さんの小説は初めてでしたが、私、伊坂さん原作の映画「アイネクライネナハトムジーク」が好きなんです。
これは、穏やかな日常風景。ちょっとした出来事の重なりが奇跡を生んでいるという、“生きるってちょっといいよね”と感じられる暖かなお話でした。
あとは「陽気なギャングが地球を回す」みたいな、ゴリゴリにかっこ良さそうな世界も触れてみたいし、「オーデュボンの祈り」を推している人もいてこれも気になっていたり。
まだまだ色々、チャレンジしてみようと思います。
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marble marble マーブルマーブル
- イラストレーターです。日々気になったことをテーマに問わずブログにしています。マーブルチョコのようなカラフルで雑多なブログを想定し、「marble marble マーブルマーブル」としました。純喫茶、マッチ、散歩、昭和の建物、昭和歌謡、片付け、スケジュール帳などが好きです。コメント欄がありません。ご感想などはこちらまで→marble●tellacoli.com(●→@)
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