てんとてん

喫茶好きのイラストレーターの日常ブログ。てんからてんへ、ぼんやりとした日々。

4月なので日記を書く。

4月になると、普段はすっかりと忘れている上京した頃のなんとも言えない気持ちが戻ってくる。

まだ何も始まっておらず、ソワソワと、不安でもあり楽しみでもあり。

ゆるやかな気温とか桜の木とか、にぎやかな商店街の感じ、電車の踏み切りのバーが上がったり降りたり。

北海道とは違い、車の生活ではなく電車と徒歩の生活になったことで、歩く場所全てにいろんな人の「生活」を身近に感じるようになった。

一軒家にはブロック塀があり、のらねこが塀に飛び乗る。

銭湯があって、遠くには銭湯の煙突が見える。

おじいさんが早めの時間から銭湯に入っていく。

コインランドリーがある。

夕方になると家の窓から明かりが灯っているのが見え、あいた窓からは料理の匂いがただよう。

電柱や電線の数も多く、不思議と絵になるなあと思う。

 

そういったひとつひとつの東京のさいしょの風景が、淡彩スケッチのように記憶されている。

 

ほんとに普段は、自分でももったいないくらいそういった感覚は忘れてしまっていて、やはり今の暖かくなっていく気温や桜の咲いている感じで思い出すのだった。

感覚と記憶の結びつきは鮮明だ。

 

なんでだろう、今も同じような風景は見ているはずなんだけどな。

感じ方が全然違う。

見ているようで見ていないのかもな。

全然違うこと考えながら見ているんだな。「この辺の土地ってどれくらいなんだろな」とか。苦笑

何か魔法が溶けてしまったような。

なんかせつないな。我ながら。

当時の大学の入学式の写真。

美大なので、めかしこむこともなく普段着だ。

 

私は20代でわざわざ大学に入り直した割にはフラフラしてて授業の取り組みにもむらっ気があって、劣等生でイケテナイ学生生活だったけど、東京でのさいしょの暮らしで味わったこの頃の感覚には特別な思い出が詰まっていて、体験できてよかったなあって思う。

春になるとよく見直す映画、岩井俊二さんの「四月物語」。

家にDVDがあるぞ。

持っている人がいたら、勝手ながら「仲間!!」って呼びたい。笑

最初のアパート、桜、作ったカレー、自転車、本屋。単館映画。ピアノの音。

あれもまた、淡彩スケッチのような映画だなって思う。

 

ところで当時の世の人々って、今みたいにスマホSNSもなかったし、wifiなんてのもなかったからか、アナログな感覚が今よりずっと大事にされていたような感じがする。

そんなことないのかも知れないけど(私が歳を取っただけかも知れないし、人によるといったらそれまでなので)、でもその象徴として、「首からカメラをぶら下げた女の子」ってのが多かったですよね?

自分の感覚で世の中を切り取るぞ、なんてね。

HIROMIXが人気でね。

おしゃれな写真がいっぱい載った雑誌も人気でね。

 

私もぶら下げて歩いていましたとも。

友人と世田谷線に乗って写真を撮ったり、鎌倉、代官山なんかも行った。

ああ、行ったさ。笑

 

今だとそういうの、ちょっと小っ恥ずかしい思い出として、自嘲気味に話しちゃうんですよね〜。笑

同世代にも同じような人けっこういるぞ。笑「撮ってた!首からカメラぶら下げてた!恥ずかしい!」って。

 

でもそれはそれで、その当時は日々の中ですごく必要で大事な感覚だったんですよね。

忘れてはいけないもの、覚えておきたい一瞬一瞬の気持ち、揺らぎのようなもの?というのを、すごく大事にしていた。

それが生きる意味そのものだったんですよね。

こういうのを忘れてまで大人になりたくないって本気で思っていたんですよね。

 

そういうのを友人とたくさん話した思い出がいっぱいあります。

札幌の喫茶店、そして東京での初期に行った喫茶店では、そういうことばかり話していました。

東京

東京

Amazon

聴きまくってました。懐かしい〜

 

おしゃれ系にかぶれていたのは間違いないけど笑、でもちゃんとそういう思い出があったのはよかったなって思う。

あの頃の女の子たち(あえて女の子たちと呼ばせてもらうが)は、今はどうしているでしょう。

元気ですかね?

っていきなり聞いてみたりして。笑

時々あの頃を思い出しだりするのかな。

忙しくてそれどころじゃない人もたくさんいますかね。

しんどい思い出もいっしょによみがえってしまって、辛くなる人というのもいらっしゃるかも知れません。

今年撮った桜。

 

そういうのを思い出すのが、私にとっての「春」で、「新年度」って感じです。

東京で最初に住んだアパート。引っ越してまもない頃に、母に撮ってもらった一枚だと思う。

通学に使用する赤い自転車をここに停めていた。

優しくて大家さんに恵まれた。今はもう壊してしまって、この建物はない。

写真も、今と違ってデータはなくて、この一枚がなくなったらもう存在しない。

大量にあったフィルムは、ある時全部捨ててしまった。

 

こういうのを思い出して文章にするために、ブログっていうのはあるんだと思う。

 

またあんな気持ちで街を歩きたいな。

スマホじゃなくてカメラを持って。

次の休みに出かけてみようかな。

 

・・・・・てんとてん ten to ten・・・・・

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