昨年11月に読んだ三浦綾子さん著『氷点』。
地元で有名な喫茶店「ちろる」も出てくるため、地元の喫茶推しはいつかおさえておきたい…という気持ちで読みました。
tellacoli.hatenablog.comそのときの感想文です。
けっこう、自己流で好き勝手に書いた文。
どう自己流かというと
“子どもたちがかわいそう”
“大人たちのすれ違いコントが甚だしい”
という2点を強調したんです。
短い文で明確な感想文にしたかったため、少し大げさな表現となりました。
氷点にある昼ドラ感、継母の理不尽ないじめや大人の卑怯さが嫌だ、納得いかないと、そこに特に着目した文章だったんです。
だけど実は、その後すぐに読んだ『続氷点』で、私はまったく違った感想を持ち、気持ちを揺さぶられまして。
いや、嫌いな大人は嫌いなままなんですが。
それでもこの物語が本当に伝えたかったことというのは、『続氷点』を読むことで私なりに見えてきたものがありました。
『氷点』はですね、『氷点』だけを読むのと『続氷点』を合わせて読むのでは、物語の感じ方は違うと思います。
物語はかなり立体的になり、それぞれのキャラクターの成長と気づきを追いかけることができます。
すんごい長いんですが。
『氷点』上下巻、『続氷点』上下巻で、4冊!!!!もあります。
時間かかる〜。
でもこの全4巻は、必ず読もう!
その方が絶対いい!後半はけっこう一気に読めます。
『続氷点』、何より陽子のその後の成長というものに、感動があります。
陽子はそもそも悪いことを何もしていないので、決して自分を責めたりなにか罪を感じて生きる必要がなく、本来の気質である「堂々と明るく優秀な清くて美しいひと」であるべきだと思います。
そんな陽子のまま、愛し愛されて、幸せになるべきひとです。
読者は完全に、そういった思いで陽子を応援しながら読んでいると思います。
ただそんなふうに生きるためには、真面目な陽子は、自身の生い立ち、自身を取り巻く人たちとの関係性、そして将来についても、ひとつひとつ丁寧に気持ちを追って、壁のようなものをクリアしていかなければいけません。
続編はそこがしっかりと描かれています。
なのでそこが読んでいて嬉しくなったな。
陽子の成長は、周りの(罪を抱えていた)大人たちにも幸せをもたらすんですよね。
全員が正しい方向、正しい関係性に導かれていくというか。
そこがとても、よかったです。
三浦綾子さんは物語をドラマチックに、緩急をつけながら進めるのがものすごくうまいので、何度もハラハラしてしまうし、最後の最後で再び非常に辛いできごとも起きてしまいます。
それにより再び陽子は苦しみますが、思いがけない展開でそれが見事に回収されます。
『氷点』『続氷点』4冊を通して大きく大きく開いていった風呂敷が、きれいに片付けられる展開となるのです。
あそこであの登場人物があのようなことをした…
おお、なるほど〜って。
あそこは読んでほんとによかったな〜。
なんのこっっちゃという感じかと思いますが。笑
頑張って読んだ人しか持てない感動です。読んだ人の特権なので、ここでは何も書きません。
ただ、そんなふうに回収されたのも、辛い気持ちを抱えている人が、さらに辛い気持ちを抱えていた人の秘密や過去を知ってしまったからに過ぎず。
物語としてはやはり、なかなかにして気が重たくなる小説だとは思います。「罪」「許し」がテーマの本なので。
小説の重たさに引っ張られても大丈夫なような、元気な時に読んで欲しいです。
ちなみに『続氷点』では「喫茶ちろる」は出てこなかったな。
旭川の街はたくさん出てきたので、それも読んでいて楽しかったことのひとつ。
物語の重要な舞台である「見本林」は今も旭川の観光スポットですし、その脇に「三浦綾子記念館」もありまして。
いつも帰ると喫茶店ばかり行ってしまうんですが、次こそ足を運んでみたいな。
三浦綾子さんの小説は『塩狩峠』に次いで二作目の読了となりました。
どちらも内容はヘビーですが、登場人物の心情や会話も綿密で、そして物語の運びがおもしろくて上手な作品を、読めてよかったです。
キリスト教への理解を深めるには私は至っていませんし、あまりそっち方面(?)に自身を持っていきはしませんが、でも読んだ分だけでも、誰かの苦しみを理解しようという気持ちにはなります…自分なりにですが。
ということで、やっと『続氷点』の感想文を書けました。
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