大学生の頃に山本文緒さんの小説を知りました。
『群青の夜の羽毛布』『プラナリア』…惹かれるタイトルの本が多くありましたが、その中に『恋愛中毒』もありました。
私は『恋愛中毒』はタイトルからして”男性に依存する恋愛体質のOLさんが苦悩するめんどくさい話”じゃなかろうか?と勝手に想像しました。
そして、山本文緒さんの文体や作風に惹かれてはいたものの、感化されやすい年頃でもあったので、そっちの世界(恋愛に依存しがちで、その世界に住み着いちゃう感じ)に引っ張られるのが怖くて、読むのをためらっていました。
そういうのを冷静に受け止められる年代になったら読んでみましょう。
…なんて思いつつ、結局そう思ったことすら忘れていました。
そして、今やもう…
“年頃かそうじゃないか”の境目もとっくに飛び越えたようなおばさん年代に入り…、非常に落ち着いたコンディションで図書館で借りて読んだ、という次第です。
山本文緒さんの本は数年前に『自転しながら公転する』をおもしろく読みました。
どこにでもいそうな人物たちが、大げさでもなく美化されるでもなく「暮らす」シーンが多く、その観察眼と表現力がすごかったです。お金のこと、健康のこと、普段の食事のこと。ちょっといいお洋服を買った時の気持ち…。
いろいろリアルなのは、山本さんが「普通に暮らす」ということをしっかりと意識して体験している方なんだろうなと思いました。
心理描写もリアルで、ここでも大げさな感じがなく、気取らず飾り気がなく、生々しくストレートに感じました。
そしてそんな生々しさが故の、ある種の色っぽさのような魅力が、登場人物には備わっているなーとも思っていました。
「一見そうでもなさそうで実はこの人モテるよな」みたいな人物像が多い気がします。
なんだか魅力があるのです。
『恋愛中毒』を読み始めた時も、そんな細かな描写が伝わり、“あ〜これこれ!”ってなりました。
そして『恋愛中毒』はストーリーの構成がものすごかったです。
主人公が、最初にどこにでもいそうな人物だと見せかけておき…ずーっとそう思わせておき…
あ、この人けっこう「かかっちゃっている人」だ…とわかるまでの、伏線が見事でした。
確かに主人公は、完全な手の内を見せない人でした。
「かかっちゃっている人」っぽい描写はありながらも、「それが何故か」までは気付かせない、そこに気を引かせないストーリー展開で、手の内を知った瞬間の不気味さはやばかったです。
ミステリー小説だと、ある程度「あれは伏線だったのかな」と気にしながら読みますが、『恋愛中毒』はリアルな日常だとすっかり思い込んで読んでいるし、山本文緒さんの小説でそういった展開が来る予想をまったくしていなかったので。
おもしろかったな。
恋愛に依存しそうな年頃をすっかり飛び越えて読んでしまって、感想文もすっかり冷静になってしまった。笑
当時読んでたら、もっと登場人物への感情移入などで忙しかったと思う。
『恋愛中毒』というタイトルの「中毒」という意味も、最後まで読んでみると納得です。少女マンガで出てくるような恋に恋するようなものとも全く違うし、恋愛大好きっていうんじゃないし。一途な純愛でもない。
「中毒」の人のストーリー、満喫しました。
以降は、過去に山本文緒さんの本を読んだ感想文。
今になって、もっと読みたい。
『群青の夜の羽毛布』『プラナリア』も読んでみようか。『再婚生活私のうつ闘病日記』も、それこそ今引っ張られるのは不安だけど、読んでみようかな。
もう少し山本ワールド楽しみます。
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