夏の読書感想文【山本文緒・自転しながら公転する】
少し前に書いた感想文のリライトです。
最近文庫になって書店に並んでいる山本文緒著【自転しながら公転する】。
山本文緒さん、大学時代にちょっとハマり、2020年にNHKのあさイチでゲストで出ているのを見てまた読みたくなり…
亡くなってもなお、紡ぐ物語と言葉の選び方、日々を生きるリアルな表現に共感します。
図書館で貸し出しの順番が回ってきて読みました。
すぐそこでありそうな日常が生々しく、それが最初リアルでいいなーって思っていたんですが、一気読みしたのもあって、ずっしりと重たい気持ちに(翌日けっこう落ち込みました)。
主人公の女の子の日常は平凡さはあるものの、けっこう地味にヘビーなことが積み重なる。セクハラ、パワハラ、上司と後輩の板挟み、親の介護。
それを飲み込み、淡々と生活を送る。
働いているのは、ローカルな場所のイオンモールのようなショッピングセンター。
地方出身の私にとって、その感じはやけにリアルを感じる。
大きなドラマがあるわけではないけれど、「自転しながら公転する」というタイトルの通り、変わらない日々のようで、少しずつ動いていく(この本、すばらしいタイトルだと思う)。
読みながら「自転はしても、人と人との関わりの中でしか公転はしていかないんだな」と改めて思った。
しかししんどい。
読む人にとっては共感力が強すぎてハードな読書なんじゃないだろうか。
日々はめんどくさいことがいっぱいだ。
主人公の母の重度な更年期症状への対応は、特に大変そうだ。
更年期は、リアルにもうじき私にも降りかかるかもしれないと思うと、本の中の描写はなかなかの地獄。怖いなあ。
症状がみっちり書かれているので勉強にもなりましたが。
気が重たいまま読み終えたけど、読了後は不思議なことに、どの登場人物たちも少しずつ愛おしい。
ちなみに主人公はファッションが好きな女の子で、「制服」「私服」を分けているとか、元森ガールとか、おしゃれ面での描写が多かったのが、センスの良い山本文緒さんらしくて良かった。
エッセイも読んだけど、私生活でのモノの選び方も素敵だ。
重度のうつ病を克服されてよかったな…と読書時は思っていたのに、その後いきなり末期癌を宣告され、1年と経たずに山本文緒さんは亡くなってしまった。
そのエッセイも私は読んだが、最後まで自分のできる範囲で気持ちいっぱいで生きている様子が伝わる。
すごく「普通」を選び取れる方だ。
悲しいけれど、読了感は何か心地よくもある。等身大の心地よさ。
どこかスーッとした気持ちの良いものが心に入ってくるのが山本文緒さんの本だ。
自分だけが大変だと思わないように、そこで不安定になりすぎないように。
山本文緒さんの本を味方につけて、またふと手に取って読んでいきたい。これからも。
物語に出てきそうな喫茶店【パーラー鯉】
そして物語に出てきそうな喫茶店には、パーラー鯉をチョイスしました。
この間のブログでも挙げたばかりですが…
近くに「レイクタウン」という大きなショッピングモールがあることや、気取らない雰囲気で街の喫茶店として長年栄えてきたことなどから、主人公の住環境と似ているところがある気がする。
ただ主人公はひとりで昭和の喫茶店にいくタイプではないと思うんですが(行くとしたらコーヒーチェーンかファーストフードかな)、更年期のお母さんと、もしくはお母さんのことを会議するのにお父さんと、社内のあの人と…
なんていうふうに想像しました。
日々に疲れている主人公、「鯉」の飾り付けも凝ってておいしいスイーツを食べて、どうか元気で暮らしてほしいっていう願いも込めて。
・・・・・てんとてん ten to ten・・・・・
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